※このページはグラビア印刷のことをあまり知らない人にもわかるように説明しています。
DTP (Desktop publishing、デスクトップパブリッシング)とは、日本語で卓上出版を意味し、書籍、新聞などの編集に際して行う割り付けなどの作業をコンピュータ上で行い、プリンターで出力を行うことである。 ... (Wikipediaより)
今日では印刷物を造るにあたって、なくてはならない存在となったDTPです。当然当社でも製版工程のほとんどがコンピューターを使っています。一昔前までは、写真のネガやポジフィルムを色分解してフィルムに切ったり貼ったりの手作業をし、苦労を重ねてやっと製版用のフィルムを作っていました。しかしDTPの登場により作業効率は各段によくなりました。
では、その作業工程を簡単に順を追って説明していきます。
まず、お客様より原稿を頂きます。近年ではほとんどがデータ入稿となり、CDやメール等で受け取ります。このときアナログな原稿はスキャナーで取り込んでデジタルデータにしてしまいます。取り込む時の解像度は原稿により400~1280dpiに設定します。 ※右の写真はスキャナーにてアナログ原稿をデジタルデータに変換しているところです。
次に指示書の内容を簡潔にまとめ、番号を割り振ってコンピュータファイル(ファイルメーカー)に綴じていきます。このファイルメーカーに一旦綴じておけば、過去の仕事を後で容易に検索できるため、非常に便利なソフトウェアです。その後、指示書の内容に従って、データを加工していきます。
当社はmacintoshG4をメインコンピューターにしており、イラストレーター8.0・CS6やフォトショップ7.0、アートワーカー4.5・10.1を使用し、データを加工・編集しています。 ※左の写真はMacにてデータ加工中
個々の担当者で写真画像の加工、表示内容の書き換え、レイアウトや配置の変更、色の調整、RGBからCMYKへの変換、文字化けや誤字脱字のチェック、製袋時の確認等、様々な作業をコンピューター上で行います。
出来あがったデータをカラープリンターにて出力します。各個人で指示書の内容通りになっているかどうかセルフチェックを行い、管理者がもう一度チェックを入れます。OKならば、お客様に確認してもらうため、カラープリントを一旦営業に託します。
色合いに厳しい物はカラープルーフ(コニカ製 デジタルコンセンサス プロ)により出力し色目を確認します。このデジコンプロはプルーフ出力と実際に製版して印刷機で印刷した物に色目を調整して合せ込んでいます。プルーフ出力の色目が実際の印刷物の色目になり、事前に色合いをシュミレーションできるのです。グラビア印刷ならではの特色の掛け合わせも表現可能です。
左はEPSONの大判プルーフ出力機PX-9000です。B0ノビサイズまで対応していますので、肥料袋やゴミ袋などの大きなデータも原寸で出力出来ます。また印刷した状態に近い、殖版してアクセサリを付けた状態での出力も可能です。導入前はA3用紙に出力したものをカッターとテープでつなぎ合せていましたので、導入後は、原寸で確認でき、お客様にも好評となりました。
左はコニカ製ファルバードアクアです。透明フィルム(70μm)に出力します。CMYK+オレンジ+グリーン+白インクを搭載し、幅広い色彩表現が可能で、実際のグラビア印刷に近い特色のイメージを出力出来ます。色校正はもちろん、サンプルやモックアップ用としても利用されています。
提出したプルーフがお客様より校了となり、製版の依頼がかかると今度は色分解と逃げ処理に移ります。この工程もDTPにて行われ、グラビア印刷業界で広く使われているサカタインクス社のアートワーカーと言うソフトを使っての作業となります。この作業は特色や白インクのあるグラビア業界特有のもので、オフセット業界(平版)にはない特殊な工程です。カラー印刷の場合はデータをCMYK+W+特色に色分解します。Cはシアン、Mはマゼンタ、Yはイエロー、Kはブラック、Wはホワイト、特色は金とか銀などです。一般的なカラー印刷では最低5色使いますので、当然製版するシリンダーも5本、色分解も5色分になります。
グラビア印刷ではその印刷の工程上、見当ずれの問題が避けて通れません。0.1~0.2mm程度上下もしくは左右にずれが生じてしまうため、簡単に言えばある程度印刷でずれても違和感がないように細工をするのが逃げ処理です。グラビアで印刷された商品を見るとほんの少しだけ色が重なってる部分や白インクが少しだけ柄より小さくなっているのに気づくことでしょう。
色分解と逃げ処理の終わったデータは殖版とアクセサリーの取りつけに入ります。グラビアの印刷では1つの印刷面に対して、縦横に同じ絵柄を幾つか貼りつけます。左の画面では縦3丁、横3丁の計9丁の同じ絵柄を1つの絵柄に見たてています。1回転の印刷で9つのものができる計算です。これを殖版または丁付けといいます。
また見当ずれを防ぐための目印になる合せトンボやカラコン(カラーコントロールマーク)、後で裁断や製袋に必要となるスリッターラインやカットトンボなどのアクセサリーと呼ばれるものを取りつけます。これで製版に必要なデータが出来上がりました。
ここからは製版方法により2つに分かれます。まずダイレクト製版法は最終的に網点(スクリーントーンの様なもの)の入ったポジフィルムを作成します。網点の線数や大きさ、角度等の条件は対象となる印刷に適したものを選択します。左のドレブというフィルム出力機により網点で出来た画像フィルムが必要な色の数だけ出力されます。
出来あがったポジフィルムは、ライトテーブルの上でそれぞれを重ね合わせて見当ずれ、逃げ、丁付け、アクセサリー、モアレの有無等を再確認します。
モアレについて少し説明します。 ダイレクト製版に限らず、グラビア印刷では1つ1つの小さな点(0.2mm以下の点)の集まりで印刷物が形成されています。細かい点で区切っていないと印刷時にインクが流れてきれいな印刷が出来ないからです。そのためグラビア印刷用の版の表面を拡大してみると、画像部分には細かい網目が入っています。それらを造るためにスクリーントーンのような点々の集まりで出来た画像フィルムが必要になります。しかしこの規則正しい網目が間違った使い方をするとモアレの発生をおこしてしまうのです。
モアレまたはモワレ (仏語moiréから)は干渉縞ともいい、規則正しい繰り返し模様を複数重ね合わせた時に、それらの周期のずれにより視覚的に発生する縞模様のことである。.....(Wikipedia より)
写真は2枚のポジフィルムを使ってモアレを再現しました。1枚だと何でもないスクリーンが重ねるとシマシマ模様に・・・ こうならないためにスクリーン角度を30度づつずらし、モアレを目立たなくさせます。
彫刻製版も同様に対象となる印刷に適した線数、角度、スタイラス角度、カーブを設定した彫刻データを作成します。
以上でおおまかなDTPの工程は終わります。出来あがったフィルムをダイレクト製版へ、彫刻データはTIFFデータに変換して彫刻機へ渡します。
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